GDPR・Cookie問題に対処するマーケティングの新たな4P
カテゴリ:Webマーケティング
本記事は、以下のような悩みを持たれた方に向けて書いております。
- 現在の市場にあった新しいマーケティングの手法を知りたい
- 従来の4Pは知っているけど、新たな4Pは聞いたことがない
- 個人情報の問題でWeb広告に今後どういった影響があるのか知りたい
- 新しい4Pで、GDPR・Cookie問題にどのように対策できるのか知りたい
今回の記事を読むことで、すでにWeb広告を運用されている方や経営・マーケティング戦略をされている方、これからWeb広告を始める方が、GDPRやCookieの問題が複雑化する2021年以降も、効果的にマーケティングを推進していくためのポイントを理解していただけます。
是非最後までご覧ください。
*マーケティングの新たな4PをスタートアップのCEOが動画で解説 *
弊社inglowの代表である小里が、AIを活用した戦略やデジタルマーケティング支援の経験を踏まえ、直接解説しています。テキストではなく動画でリアルな情報をお求めの方は下記リンクから動画をご覧頂ければと思います。
4Pとは
初めて4Pという言葉を耳にする方は以下の点だけ抑えていただければいいかと思います。
4Pとは、新たな製品を販売する時や、製品が思うように売れない時などに立てる戦略の為の分析手法のことです。
分析する指標は以下の4つです。
- 製品(product)
- 価格(price)
- 流通(place)
- 販促(promotion)
既存の4Pについて詳しく知りたい方は、下記リンクの記事で解説しています。3分程で読める内容ですので、4Pについて知りたい方は、一度そちらに目を透してからこの記事をお読みいただくと理解が深まります。
参考:
~4P分析とは?マーケティングのフレームワークその①~
新しい4Pとは
結論から話すと、「新しい4P」とは、以下の4つのことを指します。
- プライバシー(privacy)
- パーソナライズ(personalize)
- パーミッション *許可 (permission)
- パフォーマンス(performance)
このマーケティングコンセプトは、GDPRやCookie問題をはじめ、刻々と変化する世界に対応し、消費者の信頼とロイヤリティをさらに高める考え方です。
つまり、この4点を突き詰めていくことで、今後の社会の価値観に沿った先進的な企業となり、ユーザーの信頼を得て、LTV(ライフタイムバリュー)を高めていくことができます。
逆に、2020年までどれ程上手くやってきたビジネスであっても、この4Pのどれか1つでも欠いてしまうと、 一気に転落してしまうほどの危険性を孕んでいます。
順番に解説していきます。
プライバシー(privacy)
まず、1つ目のプライバシーについてお話しします。
簡潔にいうと、 「プライバシーに関する法律と規制が強化されたため、企業はデータを収集し活用するときに注意する必要があります。」ということです。
信頼と透明性は今や社会と消費者の最優先事項です。これだけテクノロジーが進んだ今でも、ハッキング などによる重大な個人情報侵害や情報漏洩が発生し続け、消費者は自分のプライバシーを懸念するよう になりました。その代表的なものが、クッキー(Cookie)です。
クッキー(Cookie)
- 特徴:
Webサイトを訪問したユーザーのデータを記録しておくための仕組み、またはそのデータのこと
Webサイトに再訪したユーザーが以前と同じユーザーであるかどうかを識別 - メリット:
たとえば通販サイトで商品をカートに入れたまま一度サイトを離れても、次のアクセス時にカート内の商品が消えずに残っているのはCookieの仕組みのおかげ
ユーザーが今見ている企業のサイトから関係のない他の企業にもユーザーの情報を与える仕組みも存在
この仕組みを「サードパーティクッキー(3rd party cookies)」という
この仕組みを利用して、企業はユーザーの情報を元にターゲットを決めて広告の配信を行うことができる -
デメリット:
サードパーティクッキーによって、多くの企業が自社と関係のないサイトでユーザーの行動履歴を情報として管理できるが、
ユーザーは誰に、どんな情報を渡して、どういった利用をされているのか知ることができない
このようにCookieはプライバシー保護の観点から注意すべき点はあるものの、本来はWebサイトを使うユーザーの利便性を高めるうえで欠かせない仕組みといえます。
なお、Cookieには有効期限があり、Webサイトの最後の訪問から一定期間が経つと廃棄される仕様になっています。
とても便利なものなのですが、一方テクノロジーの発展に伴い、以下のように考えられるようになってきています。
Cookieも個人情報の1つであると言う認識が高まり、適切に使われているか、が問われるようになっています。
問題となっているのは、特にGoogleやApple、Facebook、アリババなどが、大量の個人情報を保有し、その一部に広告主アクセスし、広告などに活用していることです。
しかもこの流れは、一般ユーザーはあまり認識していません。
これに対し、EUをはじめとする政府や社会が異論を唱え、EUは個人データ保護やそのやり取りについて詳細に定められた法令を作りました。
この法令を「GDPR(EU一般データ保護規則)」と呼びます。
EU一般データ保護規則(GDPR:General Data Protection Regulation)
GDPRとは、個人情報の扱いについての法規制です。具体的に重要な規制は以下のような事項です。
- 個人データの利用について本人の同意が必要(企業が個人のデータをどんな目的で使うかを示した上で同意をとること)
- 個人の求めで企業は個人のデータの閲覧を制限すること
- 個人の求めで企業は個人のデータを全部削除すること
- 個人の求めで企業は管理している個人のあらゆるデータを見せること
これで全てではありませんが、基本的に企業は個人の求めによってデータの利用が制限されるということです。
こちらの記事で詳しく解説されているのでご参考までに。
このGDPRの制定の結果、GoogleはGoogle Chromeブラウザに変更を加え、Cookieを介して世界中でどのように追跡されているかについてユーザーに説明を徹底するようにしました。
Cookieは間もなく減少していくのは間違いありません。企業は、Cookieが存在しなくなった近い将来、データを収集する新しい手段を見つける必要があります。
Web広告が今後どのようになるのか、今まさにGoogleやAppleなどが方針を表明したり、新しい技術を紹介していますが、まだ過渡期であると言えます。
パーソナライズ(personalize)
二つ目のPであるパーソナライズも、非常に重要です。
こんな言葉があります。
「広告を含むプロモーションが、消費者にとってノイズにならないための最良の方法は、パーソナライズを使用することです。」
どういうことでしょうか?
ネットサーフィンをしたりYouTubeをみているときに出てくるスキップできない動画やバナーに画像、あまり興味がないものばかり出てくると、邪魔ですよね。
消費者視点を重視しない広告は、以下の問題を発生させます。
- 広告主はせっかくお金を払っているのに、消費者に邪魔扱いされてしまい、むしろイメージを悪くする
- 消費者が毎日大量の広告を受け取ると、いちいち覚えていられないし、1つ1つのブランドが目立つのが難しくなる
一方で、自分が興味のあるゲームの新作の広告だったり、検討中の車に似た車の紹介広告であれば、クリックしたり覚えておくこともあるかと思います。
この違いが、パーソナライズです。
消費者の行動や好みに基づいてカスタマイズされた広告は、注目される可能性がはるかに高く、大きな ROI、つまり費用対効果を生みます。
これがやりにくいのが、マスメディアです。TVCMや新聞広告は、多くの消費者に画一的に同じ広告を見せます。
一方でWeb広告を正確に活用することができれば、パーソナライズされた広告を出すことが可能です。
これができる理由は、以下の理由です。
- GoogleやFacebookをはじめとする様々なプラットフォーマーが消費者のデータを大量に保有している
- さらに、AI技術を駆使して「こういう人にはこういう広告を出せばクリックされやすい= 興味を持ってもらいやすい」というパーソナライズをしている
GoogleやFacebookからしてみれば、消費者が邪魔に感じない広告を多く配信することで、ユーザー満足度につながり、可処分時間を確保し続けることができるので、彼らも真剣に取り組んでいます。
Web広告は誰でも配信できてしまいます。
Web広告の専門スキルがなくても、印刷会社やHP制作会社、紙の広告が得意な代理店でも配信可能です
しかし、こういった企業ではスキルがないのに仕事を受けているということが往々にしてあります。
パーソナライズを徹底するためにも、Web広告を任せる代理店選びは重要になってきます
ここまでの内容をYouTubeでわかりやすく解説しています。こちらも是非ご視聴ください。
さて、ここまでパーソナライズとプライバシーの解説をしました。 ここで、ある疑問が浮かんできませんか?
プライバシーの解説で、「Web広告などで個人情報を活用することを規制する流れがあるといっていたじゃん!」と思われた方・・・そうなんです。
ここまでですと、少し矛盾する部分があります。
この矛盾をクリアにするためのポイントが、次の3つ目のPになってきます。
パーミッション *許可(permission)
3つめのPは、許可(パーミッション)です。
2021年以降のビジネスやマーケティングでは、プライバシーとパーソナライズのバランスをとる能力が必要不可欠になります。
プライバシーを軽視すれば、GDPRなどに法的に違反し、社会的にも信用を失い、消費者はついてこなくなるでしょう。
とは言えパーソナライズを諦めてしまっては、消費者に邪魔者扱いされる費用対効果が悪い広告を打つしかなくなります。
では、どのように対策すればいいのでしょうか?
ここで重要になるのが、消費者のパーミッション、許可や認識を得ていることです。
本来の個人情報の持ち主である消費者が、そのCookie情報がどのように使われているのかを認識し、 同意した上で活用されていれば、問題ないという考え方です。
例えばECショップで使っているログイン情報やカート情報が、そのショップの中だけで使われているのであれば、消費者も便利になりますし、ほぼ認識しているので問題ありません。
ではどこが問題になるのでしょうか?以下のケースが当てはまります。
-
ECショップに訪れていたということをGoogleなど第三者が保有し、
さらに広告主も一部その個人情報にアクセスし、広告に活用されていることを、消費者の多くが認知していない - ECショップに訪れた情報が、そのECショップではない別の広告主に引き渡され、活用されること
GoogleやFacebookは、こういった状態に対し、改善案を検討しているという段階です。
上で述べた問題を踏まえた上で、広告を出す企業側の視点に立つと、以下2つのポイントで対策ができます。
-
対策1:
ユーザーの情報をサードパーティクッキーによるものではなく、許可されている自社のサイト内で情報の管理をすること -
対策2:
GoogleやFacebookなどが提案する新しいテクノロジーに注目し、情報を入手していくこと
1つ目の対策は、
消費者に許可、認識されている自社のユーザーデータを多く保有することです。
例えばWebの問い合わせフォームに個人情報を入れてもらう際に、「プライバシーポリシー」を記載していることが多いと思います。
これは、この個人情報は自社でこのように使いますよ、と説明した上で、第3者には引き渡さないなどの約束もしているということになります。
こういったユーザーデータを自社で大量に保有していれば、「こういうタイプの人にはこの商品をおすすめしよう」といったパーソナライズがプライバシー保護の範囲内で実践できるのです。
もう1つの対策は、
GoogleやFacebookなどが提案する新しいテクノロジーに注目し、情報を入手していくことです。
GoogleやFacebookなどのWeb広告サービスは、個人情報を活用していることを問題視されているとは言え、
パーソナライズという視点からは、消費者にも広告主にもプラットフォーマーにもWinWinWinの関係になっています。
そのため、今後Webのターゲティング広告そのものが全くできなくなるとは考えにくいです。
GoogleやFacebookは、プライバシーを保護しながらもパーソナライズ広告を配信するテクノロジーを検討しています。
例えばGoogleは、「プライバシーサンドボックス(Privacy Sandbox)」というテクノロジーを提案しています。
プライバシーサンドボックス(Privacy Sandbox)
- 特徴:
広告主がユーザーの個人情報に直接アクセスできないようにしながらも、ターゲティング広告の実行することができるようにする取り組みのこと
- 詳細:
「ユーザーを個人ではなく、同様の傾向や好みを持つ大規模なグループとして識別し、そのグループごとに異なる広告を配信する」という方法
ここに機械学習アプローチを導入することで、ユーザーのプライバシーを保ったままそれぞれの趣向にあった広告が配信できるようになる
この行動履歴をサーバーに集約しない機械学習の方法を「FLoC(Federated Learning of Cohorts)」と言う
機械学習によって、ユーザーの行動履歴を元にターゲティングするのではなく、ユーザーの属するグループを元にした行動特性を利用し、ユーザーのプライバシーに配慮しつつ広告を表示する仕組み
まとめると、プライバシーサンドボックスが脱・サードパーティクッキー化に向けた取り組みのことを指し、FLoCがその為に導入されている機械学習の方法のことを指します。
興味のある方は以下の記事で詳しく解説されています。
しかしこの提案も、まだ社会に受け入れられているわけではなく、実際にこれにシフトするかどうかは不透明な状況です。
このあと数年でこのような動きは活発化していくので、テクノロジーとGDPRの情報をいかに早く掴み、自社の広告運用に取り入れていくかというのがポイントになります。
パフォーマンス(performance)
最後のPは、「パフォーマンス」です。
もう少し言葉を足すと、パフォーマンスをデータ・数値で測定し、PDCAを回していくこと、です。
広告代理店 経由でWeb広告を配信しているのに、レポートが毎月ざっくりしていて、ピンとくる改善案が示されていないという状況であれば、かなりまずいです。
ここでWeb広告を運用するマーケターの良い例、悪い例をあげます。
-
良いマーケターの例
- 情報のキャッチアップが早く、システムやテクノロジーの進化を活かし、分析〜改善のPDCAを素早く回す
- 複数の媒体のダッシュボードから、横断的に比較し、具体的な問題を見つけだしてどのように改善すれば良いかを検討する
-
悪いマーケターの例
- 複数の媒体を横断的に見ない
- ダッシュボードの数値だけを見て、何日間の単位で改善があったか、悪化があったかの2軸でしか判断せずレポートを書く
もしあなたの会社が、GoogleとFacebookとLINEとTwitterの広告を同時に行っているのであれば、それぞれのダッシュボードを横断的に見て、さらに広く深い分析をする必要が出てきます。
しっかりと分析しデータドリブンで改善していけば、毎月CPCクリック単価や獲得単価が10%ずつ改善できるかもしれません。
毎月これだけ改善できれば、1年で倍近くの差が出てきます。 広告費を2倍かけるのと同じ成果を出すことができるんです。
これをやる企業とやらない企業で、大きな差が生まれるのは必然です。
Web広告を配信すること自体は、誰でもできます。
しかし、配信中や配信後のデータを分析し、改善していける企業やマーケターばかりではありません。
だからこそ、社内の人材育成や広告代理店選びは非常に重要なのです。
2021年以降は、データドリブンの成果測定と改善がしやすくなったことにより、よりこのパフォーマンスという観点が重要になっていきます。
パーミッションからパフォーマンスまでの内容を動画でわかりやすく解説しています。
内容は少し難しいですが、広告運用をする上で必須の内容ですのでおさらいも兼ねて、是非ご視聴ください。
まとめ
2021年以降に重要になる新たな4Pについて話してきました。
・プライバシー
・パーソナライズ
・パーミッション *許可
・パフォーマンス
です。
この4つに対応できるかどうかは、今後の企業の成否を分けるといっても過言ではありませんので、信頼できる社員や広告代理店を見つけ、うまく対応していっていただけるといいなと思います。
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